暑中どころか残暑超えてなんか台風なんだけど。  アルェー(´・ω・`)  このままだとマジで来年まで持ち越しそうなんで思い切って放り投げるソォイ 【注意】  b.H.HのRPG編アフターです。基本エノクとミコトがだべってるだけの話。  http://air.x0.to/up/src/sm7798.zipの続きです。数年後くらい?  書きはじめた当時はクソ暑かったんだよ!!(タイトル)  残暑見舞い申し上げます。  こちらでは連日猛暑が続いておりますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。  本物の秋が待ち遠しい今日この頃、私どもは――――あー、めんどい。  てゆーかなんか違うよね、こういうの。  やっぱ自分の言葉で語らなくちゃさ。  肩が凝るような話し方は、あたし達には不似合いだもの。  こっちの夏は、やたら暑かったよ。  むしろ今も暑い。  はやく涼しくなって欲しいけど、寒いのはそれはそれで苦手なんだよね。  まぁ暑いよりはいいか。  そういえば、そっちはどうだい?  天界の夏って暑いのかな。  もう知ってると思うけど、今度そっちに行くんだけど、暑いとちょっと嫌だなぁ。  行くっていっても、遊びに行くんじゃないぞ(笑)  これもオリンピアの族長としてのお仕事だから。  でも、またあんた達に会えるんだから、役得ではあるよね。  なんとか時間作るからさ、今度、久しぶりに会おう。  エノクも交えてさ、あの冒険を振り返るのも楽しいかも。  ハルたちからの土産も預かってるから、期待して待ってるように!  それじゃ、このへんで筆を置くよ。  えーと、こういう時なんて書くんだっけ?  ……  そうそう、これだ。  残暑厳しき折、どうぞご自愛くださいますようお願い申し上げます。      § 「大変よ、エノク君!」  天界にある太陽の塔――その主の部屋へと、血相を変えたミコトが入ってくる。手紙を握りしめた彼女の表情はタダ事ではなく、エノクは何事かと眉をひそめた。 「どうしたの?」 「――トゥビーが来るって!」 「ナッツさん?」  ナッツ・トゥビエル。  オリンピアの民――天界と地上を結ぶ天界樹を管理する一族の長である彼女は、かつて冒険を共にした頼れる仲間のひとりでもある。面倒見のいいナッツはパーティ最大の問題児であったミコトと行動を共にすることが多く、結果としてふたりは親友といっても差し支えない間柄になっていたのを、エノクはよく覚えていた。 「ナッツさんか……懐かしいなぁ」 「ね、その懐かしのトゥビーから残暑見舞いが来てさ。これが(笑)とか書かれててマジでイラっとくんのよね。思わず握りつぶしちゃったわ」 「それは――せっかくの残暑見舞いなのに散々な扱いだね」  エノクは手紙を受け取り目を通す。ナッツらしい文面に自然と笑みがこぼれた。 「ハルさんたち、元気でやってるみたいだね」 「そんな事はどうでもいいのよ」 「えー……」 「それより問題なのは中身よ中身! あぁーどうしよう! ホントにどうしよう!!」  ミコトが頭をかきむしる。 「何をそんなに慌ててるの? あんなに仲良しだったんだし、喜んでもいいと思うけど」 「そりゃあ、会えるのは嬉しいけどさ……」  どうにも歯切れが悪いミコト。  その顔に朱がさしていくのは、決してエノクの気のせいではないはずだ。 「???」 「……。……これよ、これ」 「これ?」  観念したようにミコトは――自らの髪を一房つまんだ。  黒い、髪の毛を。 「前は染めてたじゃない? ……だから、その、……ぶっちゃけこの姿で会うのが………………、……………………恥ずかしい」 「えぇ、なんで!?」  思いもよらぬ返答にエノクは驚く。  ミコトの顔はほのかに赤く、複雑な表情といい、本当に恥ずかしいと思っているのだろう。だけど黒髪のミコトだって可愛いのだ。本人だってそう自認していたし、それこそ、何をいまさら恥ずかしがるのかという話だ。 「なんでって、そりゃ……」  反論しようとして、ミコトは声をつまらせる。  言葉を探すように視線を彷徨わせたあと、結局、彼女は怒鳴るようにこう言った。 「ああああもう! とにかく、恥ずかしいものは恥ずかしいのよ!!」 「はぁ」 「てか地上の連中は天界に来れないんじゃなかったの!? あの感動の別れはなんだったのよ!」 「……ほら、オリンピアのみんなはもともと天界の人だから。ソフィア様の意向次第で、呼び出されても不思議はないよ」 「そーいうものなの? じゃあトゥビーはこれからも来る可能性があるんだ」 「多分、だけどね」  もっとも、エノクが知る限りではこんな事ははじめてだ。  天界がオリンピアと連絡を取る場合は、天界樹を通して天使が派遣される手はずになっているし、そもそも天界人の多くは地上人のことをあまり快く思ってはおらず――ぶっちゃけ見下していると言い換えてもいいだろう。そんな彼らが、自分たちの血族であるとはいえ地上の色に染まりきったオリンピアの民を天界へと招き入れるというのだから、今回のことは歴史的な大事件であった。 「ちっ、ソフィアめ……余計なことを」  ミコトは苦い顔で舌打ちをする。 「それすっごい悪人みたいだよ、ミコト。……まぁ今回の件、僕は知ってたけど」 「ちょ、なんで!?」  そういえば、まるでこっちが承知済み、みたいな手紙ではあったが……少なくともミコトにとっては初耳である。 「前にソフィア様と話したときに、そういう話が出たんだよ。近いうちにオリンピアを呼び出すって。もうパーティの準備もほとんど終わってるんじゃないかな」 「えー。なんでそんな大事なこと教えてくれないのよ」 「……教えたよ?」 「えっ」 「話が出たときに、ね。ミコトはあくびしながら「ふーん」とか言ってたけど」 「オボエテマセン」  そりゃそうだろうなとエノクは思う。 「ふ、ふん。自慢じゃないけど天使たちのマツリゴトに興味なんてないもの。いつだって全力で聞き流すだけよ!」 「本当に自慢できないから、それ」 「だってさー、なんかムカつくのよね、アイツら。アタシらのこと扱いあぐねてるでしょ。嫌ってますって空気全開で、一緒にいるとすっごくイライラする!」  ミコトは鼻を鳴らす。  地上生まれの地上育ちのくせに、その功績からソフィアや天使たちに対して一定の影響力を持つ彼女の立ち位置は極めて微妙なのだ。旦那であるエノク共々、ソフィアが敬意を持って接するようにと号令を出しているからこそ表立って大きな問題は起きていないが、内心ではロクデモナイ感情がグツグツと煮だっているのは嫌でもわかってしまう。  自分を嫌う相手に、ミコトは容赦がない。  敵意には敵意で応えることが誠意だとすら思っているくらいだ。  そんな関係を改善しようと、大天使のひとり、ご老体ことZI(ズィーアイ)・ジージャはミコトを天使大隊の戦闘教官に推薦し、ミコトもそれを引き受けた。  ジージャとしてはミコトの社会的地位を確立することにより周囲の感情の緩和を試みているようだが――ミコト自身はたんに戦闘訓練と称して暴れられるからという理由で引き受けただけだったりする。  そうして、ついたあだ名が『天使殺し(エンジェルスレイヤー)』。  実にグダグダであった。 「ああもう、思い出したらムカムカしてきた。今度また鍛えてやろうかしら」 「……ミコトの場合は自業自得だと思う」 「だってアタシはエノク君みたいにお人好しじゃないもの」 「だけど、ミコトがいつまでも腫れ物みたいに扱われるのは悲しいよ……」 「……む」  しょぼくれるエノクに、ミコトの胸がちょっとだけ痛んだ。  陰険天使どもに迎合するのはマジで嫌だし、死んでもお断りなのだが――かと言って旦那にこんな顔をさせるのも気分が悪い。ならば、少しくらいは妥協するべきなのだろう。  ……驚くべきことだ。  ミコト・ヴィスウェンが、誰かのために自分を曲げてやるなんて、少し前なら絶対にありえないことだったのだから。 「……わかったわよ。なるべく努力する」 「ホント?」 「なるべく、だけどね。文句ある?」 「ううん。ミコトがそう言ってくれるだけでも嬉しいよ」 「――ふん」  ミコトはぷいっと顔をそらした。  なんだかんだでミコトはエノクに弱いのだ。まさに惚れた弱みである。我を通すことを当たり前と思っているような彼女がこの有り様なのだから、愛は人を変えるというのはあながち間違いではないのかもしれない。  それはともかく。 「――ところで、髪を染め戻さないと恥ずかしいって話だけど」 「チッ、覚えてやがった」 「そんなすぐに忘れないよ。……ミコトは、どうしても染め戻したいの?」 「……どうしても染め戻したいのよ」 「ふーん……」  エノクは納得しかねるように首を傾げた。  髪を染めていた理由は、育ての親であるヴィスウェン・カノンという女性に憧れ、彼女を模していたからだという。しかし旅を通じてその想いはひとつの決着を迎え、エノクと所帯を持つようになってからは綺麗サッパリ、髪を染めるのをやめていた。  それが、昔の友人と会うためだけに、染め直したいと思うほどなのだろうか? 「……」  なんだか、ムッとしてきたエノクであった。 「……ミコトはどうして髪を染めるのをやめたの?」 「え?」 「僕との結婚を機にやめたけど。それなりの決意があったと思ってた」 「それは……うーん……」  ミコトはなんとも微妙な顔つきをする。目が完全に泳いでおり、頬もどんどん赤く染まっていく。モジモジしているミコトは珍しく、可愛らしいが挙動不審で気味が悪かった。 「……から」 「え?」 「……――と思ったから……」 「ごめん、よく聞こえない」 「……、――だーかーらー! ……子供ができて、親がヤンキーだったら、可哀想だと思ったのよ!」 「は――?」  がなるように言うミコト。  エノクは……自分の顔が、だんだんと熱を帯びてきたのが、よくわかった。 「そんな、気が早い……」 「う、うるさいわね! いいじゃない、別に」 「……」 「……」  お互いに次の言葉が見つからず……部屋に熱い静寂が訪れる。  と―― 「話は聞かせてもらった。人類は滅亡する!!」  ズパン! ――と勢い良くドアを開けて入ってきたのは、天然物の金髪をもつ女性、天界の統率者である光浄蝶ソフィアだった。 「……」  夫婦の甘い空気を文字通りふっ飛ばしてくれたソフィアにエノクたちの冷たい視線が突き刺さる。部屋に入る時はせめてノックくらいはして欲しい。そして鍵はしっかり閉めておこうと誓うエノクであった。  というか…… 「……ソフィア様、いきなり何を言っているんですか?」  地上では神霊や光の精霊王とまで呼ばれている偉大なる彼女の台詞である。冗談にしてはたちが悪い。 「???」  首を傾げるソフィア。 「……これが地上での標準的な挨拶だってミコトから聞いたのだけれど……違うの?」 「……」  エノクは無言で自らの愛妻を見つめる。  ミコトはちろりと舌を出し、悪戯が見つかった子供のように笑ってみせた。 「てへぺろ♪」 「――あとでジージャさんにお説教してもらうから」 「うぐ! あの、ひたすら長くてくどく、そのくせ全体的に浅いと評判の天界最終兵器ジージャのお説教……だと……! エノク君には慈悲という言葉はないの!?」 「ないよ」  嫁の悪行には容赦のないエノクであった。 「それで、今日はどういったご用ですか、ソフィア様」 「ん――。エノクたちに、意見を聞きにきた。オリンピアの民を、どのように歓迎すべきだろうか?」 「どう――と、言われますと?」 「せっかくだから、彼らを地上式に歓待してあげたい。しかし私たちは地上の風俗には疎い。だから、エノクとミコトの意見を聞きにきた」 「あー、そのことで重要な話があるのよ!」  ミコトが挙手する。 「ソフィアさー、染髪料もってない? 金色のやつ」 「……ミコト、君って本当に誰だろうと遠慮ないよね」  なお、ソフィアはミコトのこういう態度にキレたことは一度もない。心が広いのか、天然なのかは側近を務めるエノクにも判断しかねるところだ。 「……もってないけど。染め戻すの?」 「一時的にね。オリンピアの奴らに今のアタシを見せたくないのよ」 「どうして?」 「そ、それは――――……アンタには関係ないことよ!」 「そう」  こんな失礼な小娘にも、ソフィアは特に気を悪くした様子も見せなかった。 「てかさ、歓迎会、中止にしてくんない?」 「それは無理」 「なんで?」 「今度のパーティは、オリンピアとの完全な和解の意味もある。魔導師によって断ち切られかけた繋がりは修正しなければならない。だから、中止にはできない」 「ああ、あの時の……」  ミコトは苦々しい顔をする。 「――ったく、アンタらが勝手に勘違いしただけでしょーに」  かつての冒険の終盤、エノクたちとオリンピアの民は、天界と敵対した。その裏には魔導師ソーサラーの暗躍が――あったわけではなく、天界側が一方的に勘違いし、結果として敵対することになってしまったのだ。 「はぁ。アンタの大ポカのせいで大メーワクだわ!」 「なぜ、そんなに黒髪を嫌がる?」 「……」  憮然とするミコトに、ソフィアは興味深げに問いかけてくる。  ミコトはしばらく迷っていたものの、女同士なら別にいいかーと思い直し、こそっとソフィアに耳打ちした。 「ごにょごにょごにょ」 「……ふむ。結婚したことを冷やかされたら恥ずかしい?」 「だあああああああああああああああああああああああああああああ言うな!!」  あわてて口塞ぐミコト。 「アンタは! アンタは! アンタって奴はああああああああああ!」 「ぐむー、むがむが」  秘めやかな乙女心なんぞ欠片も理解してないソフィアに絞め技を決めながら、慌てふためくミコトである。こんな天然なんだか無能なんだかよくわからない奴に、少しでも心を開いてしまった己の迂闊さを呪ってやりたい。割りとガチで。  そんなふたりのじゃれ合いを、エノクはきょとんと見つめていたが……やがて、くすりと微笑んだ。 「なんだ、そんな事だったんだ」 「あ、アタシにとっては大問題なのよ!!」 「いいじゃない。僕はみんなに僕のお嫁さんを見せつけてやりたいよ」 「ぐぬ……!」  さらりと言ってのけるエノクに、ミコトは言葉につまり――小さく、吐息をこぼした。  今日何度目だろうか、体も心も、嫌になるほど熱い。  でも、とても心地の良い熱さだ。  この熱さの正体を、ミコトはよく知っている。 「……エノク君って、たまに生意気よね」 「そうかな?」 「――違うわね。いつもいつも生意気だわ。まったく……」  やがて―― 「…………まぁ、エノク君が、そこまで言うなら……」 「うん。よろしくね、ミコト」 「……ん」  唇を尖らせながら、渋々といった風体でミコトはこくんと頷くのだった。  なお、夫婦がいちゃついてるその横では、ソフィアがミコトに綺麗に絞め落とされていたりするのだが――  それはまぁ、些細な話である。      §  ちなみに。  後日、天界へとやって来たナッツ・トゥビエル率いるオリンピアの一団は、天使たちの予言を耳にする。 「話は聞かせてもらった。人類は滅亡する!!」 「な、なんだってーー!!」 「……ミコト、これ、あんたの仕業でしょ?」 「てへぺろ♪」 「……しまった。訂正させるの忘れてた……」  エノク夫妻がジージャのありがたいお説教をご拝聴になったのは、言うまでもない。  糸冬