前書き この雑文は、自作黒歴史であるMLの設定の一部を語るべく、思いつきで作ってしまった シナリオに関連するあるキャラの視点を中心とした物語です。 確認事項(大体今決めた) ステミア王国…ディアス君の出身国。歴史と秩序がウリの、大陸有数の国。 リーフィア王国…ニーナさんの出身国。昔は小国の一つだったが開拓精神をウリに国土を広げ続ける。 騎士団…ステミア王国の王立騎士団。ディアス君やらウィレム君やら。ステミア王国の特権階級層を構築する。 誤算。 いや、何かが違う。 後方に駆けつけ、部隊とリーフィア軍の交戦を確認したアレックスが最初に戦場から感じ取ったのは、違和感だった。 目の前を見れば、横っ腹から奇襲を受けたはずの部隊は、既に立て直してリーフィアの部隊と互角に戦っている。 それ自体は評価すべき事なのだが。 ここで自軍の目的は、進軍する事だ。こいつらに手を煩わせる事ではない。 事実、傭兵を中心としたこの部隊は交戦に夢中になるあまり、ここに釘付けになっている。 「だ、旦那ぁっ!!」 ダゴスのしわがれた声が聞こえる。ダゴスがいるのなら都合がいい。 「ダゴス!私が動いたら傭兵達を道の先に先導しろ!!」 「だ、旦那!?」 「こいつらの相手は」 アレックスが手綱を引く。 「一騎いれば、十分だ!!」 リーフィアの下りてきた坂を逆行する。森に潜むにあたって、騎馬を用意できなかったと見える。 リーフィア兵達はあわててこちらに武器を構えるが、この人数なら騎馬のアレックスの相手ではない。 そう。リーフィアの部隊は寡兵であった。 最初から我らが部隊の出現を予期しての配置ではなかったのだろう。ならば、頭を倒せば勝負はつく。 それはいい。 だが、最初に感じた違和感は、そこではないのだ。 「―――!!!」 坂を上りきり敵の陣営にたどり着くなり、怒声が響き渡る。それは、敵の部隊長のいるべき正面からではなく。 横からだった。 樹上から現れた若い兵士に突如、奇襲を受けたアレックスは、馬から弾き下ろされ、脇のブッシュに突っ込む。 足元の不安定な密林にて何とか体勢を立て直すと、先ほどの兵士が猛然と襲い掛かる。 捌き、はじく。随分と軽い。お見通しのように、また樹の影に隠れる。なるほど。 こういう相手の御し方なら、分かっている。 目を瞑り、鞘を引き上げ、もう片方の手で柄を握る。 そして。 力任せに振り抜く。 瞬く間に、目の前の木々数本が音を立てて倒れ始める。 その木の影から、先ほどの兵士が飛び出す。目を白黒させて、倒れゆく木々を見つめている。 その初々しい反応に、アレックスは士官学校時代をさえ思い出していた。 「…さて」 アレックスが話しかける。 『私はステミアの武人だ。ここで倒れたくないならば、君の部隊長の所に案内してくれ』 士官学校時代にかじったリーフィア語だ。外交にも関与すべき騎士という立場上、当然の知識だ。 「……」 突然に聞き慣れた言葉を聞いたせいか、そいつはビクリとして剣を構え、警戒を強める。 金髪を鉢巻でかきあげ、ギラギラと敵意を光らせるその目は、リーフィア人の象徴と言われる碧に輝き、 透き通るような白い肌を、腕に顔に広範に露出している。 (女がそうだとは聞いていたが、男もとはな…俺にはそっちの趣味はないが、ステミアなら貴婦人達が放っておかないだろう) 不覚にもそんな事を考えてしまった。 兵士が口を開いた。 「―――」 訛りがきつくて、聞き取れない。リーフィアでも随分地方の出らしい。 しかし、要点は聞き取れた。 『あんたが、部隊長ってわけだな』 鎧をほとんど纏ってないのも、油断ではなく自信の表れらしい。にやりと笑うと剣を深く構える。 「話が早くて、助かるよ」 今度は母国語で呟いて、アレックスも、剣を構える。