年末年始に掛けた小ネタ…のつもり。 SS形式ではなく、ト書きとセリフで構成された台本形式なので、クオリティは求めないでください。 ****************************************************************************** □前提:本編前、ティオが引き取られてから暫く経ってる?冬の寒い時期。  ・リンド邸玄関、フォリーさんが旅行カバンを持っている。 フォリー:申し訳ございません、このお忙しい時期に……。 リンド:構いませんよ。 どうぞ、存分に羽根を伸ばしてきてください。 ファル:お土産、楽しみにしてますよー。 フォリー:あらあら。  ・フォリーさん、くすくすと笑い、ティオに向き直る。 フォリー:ティオさん、キッチンの台帳に必要なことは書いておきました。      何かあったら、それをご覧なさいね。 ティオ:はい。 フォリー:……正直心配ですが、ここは心を鬼にしてティオさんに雑務をお任せします。      リンド様の助力となるよう、頑張るのですよ。 ティオ:はい、フォリーさんの分まで頑張ります!  ・馬車に乗り出発するフォリーさん。見送る三人。  ・ティオモノローグ ティオ:(今年の冬、フォリーさんはお子さん家族からの招待で、里帰りをすることになりました。      いつも心配や迷惑をかけてばかりなので、労いの意味も込めてわたし達は笑顔で送り出すことを決めました。)  ・屋敷の台所、食器を片付けるティオ。フォリーさんの台帳を広げる。 ティオ:(わたしはまだまだ未熟で頼りないけど、フォリーさんが居ない分      兄さんの従者として恥ずかしくないように、いっぱい頑張るんだ……!)  ・拳を握る。  ・執務室、書類をまとめるリンド、応接用のソファにどっかと座るファルーフ、茶を入れるティオ。 リンド:これで今年の分の仕事は、全て滞り無く終わったな。 ファル:お疲れさーん。 あとは年始までダラダラ過ごすだけだな。 ティオ:今年は商店の方には行かれないんですか? ファル:お嬢さん、この世には知らなくていいことがありましてね……。 ティオ:ご、ごめんなさい。 リンド:ティオ、放っておけ。  ・リンド、呆れつつ。 リンド:……ともあれ、年の明けは静かに過ごすに限る。 ティオ:……(帝都には、戻られないのかな?)  ・来訪者の鐘の音。  ・ティオ、玄関まで小走りで向かう。ファルーフはソファから立ち上がり部屋端に移動する。  ・ツカツカと執務室に近づく複数の足音。勢い良く扉が開く。 セオルス:お邪魔しマスヨ。 ミーケル:失礼致します。  ・総員、いささか顔を顰める。 リンド:ポー卿、わざわざお越しいただくとは……。 お待たせしまして誠に申し訳ありません。  ・リンド、セオルスに書類を詰めた封筒を渡す。わざとらしい溜息でそれを受け取るセオルス。 セオルス:この寒空の中、全くいい迷惑デスヨ。 愚図はこれだから困リマス。  ・おずおずと茶を出すティオを、向き直らず手で退けるセオルス。 セオルス:それから……。 ミーケル:恐れながら、ブルーゲル様。 門の前にこのような書状が落ちていました。  ・ミーケルから手紙を受け取り、読み始めるリンド。次第に表情が曇っていく。 リンド:こ、これは……。 今日届いたのか? セオルス:知りまセンヨ。 ミーケル:ここ数日、帝国領土各地で寒波や吹雪が続いていましたから、それにより配達が遅れた可能性はあります。 リンド:……。 失礼。  ・ファルーフを手招きするリンド、机の近くまで行き、共に手紙を読む。呆れと焦りの混ざったような表情。 ファル:おいおい……。 リンド:今から連絡――いや、遅い。 ティオ:?  ・困惑するティオを見兼ねた二人。 リンド:これは、帝都からの招待状だ。 ファル:帝国騎士みんなで年越しパーティーしませんか?って内容だな。 っつっても、ほぼ強制参加だけど。 リンド:早馬で行けば間に合う……か? ファル:てかキャンセルできねーの? スピラに連絡入れてよ。 リンド:駄目だ、不参加表明の期日は過ぎている。  ・リンド、セオルスに向き直り。 リンド:ポー卿、申し訳ございませんが、我々はこれから帝都へ向かいますので、本日はこれで……。 セオルス:ハイハイ。 リンド:ティオ、急いで旅行支度をしなさい。 ティオ:は、はい! セオルス:オヤァ〜?  ・わざとらしい大声を出すセオルス。 セオルス:と言うことは、この屋敷は年始まで無人ということになりマスネ。 領主が、代理人も立てず、大事な土地を。      貴公も随分と無責任デスネ。 街の民がこうも粗雑に扱われては、貴公を後任に選んだ私も立つ瀬がありマセン。  ・リンド、少し疲れたような表情。 リンド:……仰る通りです。 面目次第もありません、全て私の過失です。     しかしながら私も帝国騎士故、陛下からの招待を無碍にはできません。  ・ファルーフとミーケルが呆れた様子で、ティオが困惑しながらやり取りを見ている。 ティオ:(ど、どうしよう……兄さんが怒られてる。 領主としての仕事と、騎士としての仕事が重なっちゃった、ってことなのかな?      ポー様のお話の感じだと、このお屋敷を無断で留守にすることについて、怒っていらっしゃるのかな……?) リンド:ポー卿、このような形で恐縮ではありますが、我々が戻るまで領主代理をお願いしたく……。 セオルス:無能のせいで振り回されるのは、本当に困りマスネ〜。 仕方あり――。 ティオ:あ、あの……!  ・ティオ、一歩踏み出す。 ティオ:わたしが留守番をします! リンド様が戻られるまで、わたしがここに残ります! リンド:なっ? セオルス:ハァ? 雑用風情が出しゃばるんじゃありまセンヨ。 ティオ:わたしは使用人で……難しいことも良く分かってないですけど、でも使用人だからリンド様の助力に――。 セオルス:自身の無能を理解して尚、しゃしゃり出るとは……とことん周りが見えていないようデスネ。 ティオ:む、難しいことはできませんが……お留守番、なら……。 リンド:馬鹿者! お前のような者を、何日も独りにできる訳ないだろう? ティオ:り……リンド様の、お役に……。 セオルス:貴様如きが役に立てる、とォ? ホッホォ、これはこれは、口では謙遜しつつ実際は己が技量に、      自信があるようデスネ〜。 ティオ:わ、わたし……。 リンド:お前が出る幕ではない、素直に従うのだ。 ティオ:あの……。 ファル:おーおー、すごい責めだな。  ・詰め寄られて涙目になるティオ。少し輪から外れて傍観するファルーフ。 ミーケル:――僭越ながら、私からも宜しいでしょうか?  ・やりとりの輪から更に離れた位置に居たミーケルが咳払い、4人の視線が集まる。 ミーケル:例年、各種税・流通物資・設営費諸々含めた決済、来年度の予算提出が、セオルス様の最後の仕事となっていました。      勿論プライベートな用事は勘定に入れてませんが、ブルーゲル様がこれを我々に渡した時点で、本年度の      カンパニュラ領主としての仕事は終わったかと思われますが……如何でしょうか? リンド:そ、相違無く……。 ファル:今し方話してたよな、オレ達……。  ・ティオに小さく耳打ちするファルーフ。 ミーケル:極端なことを言ってしまえば、仕事が終わってしまえば街の民にとっては、年始まで領主が居ようと居まいと      大した問題ではございません。 実際、セオルス様の代もそうでした。 セオルス:えっ?  ・ミーケル、気にせず続ける。 ミーケル:ですので、ブルーゲル様はご自身の他の責務を優先されても、問題無いと思われます。      流石に無人屋敷も無用心ですが、幸い留守番の立候補者も居らっしゃるようですし。      また、この天候故、アポ無しの来客に関しても心配は無いかと思われます。  ・一拍置いて、眼鏡をかけ直しながら、冷やかな視線をリンドに向けるミーケル。 ミーケル:……尤も、ブルーゲル様にとって彼女が信頼に足る人物ではない、ということであれば、話は別ですが。 リンド:お言葉ですが、カンパニュラ領主として仕事が終わったのであれば、これより先はブルーゲルの問題。     貴殿等の手を煩わせずとも、こちらで全て解決させます故、口出しはご遠慮いただきたく。 セオルス:よくもそんなことが言えマスネ。 ファル:――で、お前としての意見は? ティオ:えっ?あの……。  ・ファルーフが促したことで、今度はティオに視線が集まる。 ティオ:その……招待をされたのは帝国騎士のリンド様とファルーフさんで、わたしは部外者です。     わたしが付いて行っては、却って邪魔になってしまいます。 ブルーゲルのお家にも……その……。 リンド:であれば、エントニエン家に――。 ティオ:それに、フォリーさんが里帰りされる際に、使用人としての役目を頑張ってこなそうって誓ったんです。     私はまだまだ失敗も多いし、頼りないですが、でも……。 リンド:……。  ・リンド、言いかけようとして葛藤、大きく溜息を吐く。 リンド:今更問答している余裕もないな……。 分かった、そこまで言うならお前に留守を任そう、ティオ。  ・ティオ、目を輝かせ大きくお辞儀。 ティオ:あ……ありがとうございます、ありがとうございます! ファル:おっし、問題解決! んじゃ早速準備だな。 ミーケル:お話も終わったようですので、私達はこれで失礼致します。 セオルス様。 セオルス:あーハイハイ。  ・セオルス達退場。  ・時間経過、リンド邸玄関先に馬車が一台停まっている。  ・外出自宅をしたリンドとファルーフ、ちらちらと雪が降り始める。 ファル:げー、いよいよ降り始めやがった。 リンド:帝都は少し暖かい、それまで我慢しろ。 ファル:へーい……。  ・ティオに向き直る二人。 ファル:何かあった時には、スピラかブレスん所に連絡しろな? 話はつけとくから。 ティオ:はい、スピラさんとブレスさんに、よろしくお伝えください。 リンド:必ず伝えよう。 ……では、行ってくる。 ティオ:はい、行ってらっしゃい。 兄さん、ファルーフさん。  ・馬車に乗る二人。馬が走り出し、それを見送るティオ。吐く息が白い。  ・夜、リンド邸キッチン。テーブルに一人分の食事が並べられている。 ティオ:(いつもは食堂に並べるけど、兄さん達が居ないから、ここで良いかな?) ――いただきます。  ・黙々と夕飯を食べるティオ。窓の外には雪が積もっている。  ・以下、時間経過で片付けられた食器、灯りの点いていない客間、同じく廊下が映る。  ・使用人室、ティオがノートに今日の出来事を書いている。 ティオ:(とりあえず、兄さん達がいつ帰ってきてもいいように、屋敷の掃除は忘れずに……。      今の内に果物も買っておかないと……それから――。)  ・ひと通り書き終えて、筆を置きノートを閉じる。机の上の灯りを消してそのままベッドに入る。 ティオ:……。  ・少しだけ風が出てきたのか、木々のさざめきが聞こえる。 ティオ:(兄さん達、もう寝たのかな……?)  ・ぼんやりと天井を眺める、眠くなってきたのか、数回瞬き。 ティオ:おやすみなさい……。  ・ゆっくりと目を閉じる。 ティオ:(――そういえば、父さんが亡くなってから、一人になるのって初めてなんだ……。      なんだか、世界中が静まり返ったみたい……。)  ・翌朝、起きていつもと同じように屋敷のカーテンを窓を開ける。外の雪は昨日より強くなっていた。  ・ダイジェストで朝食、洗濯、掃除の場面が映る。  ・昼、商店の方へ買い物に出掛けるティオ。年末の買い貯めの為か、いつもより人が多い。 魚売の男:毎度! ティオ:ありがとうございます。 青果売の女:聞いたわよ、ティオちゃん。 今領主様居ないんですって? ティオ:あ、はい。 年始まで帝都の方へ出かけてらっしゃいます。 魚売の男:へぇ〜、ひとりでお留守番って訳かい。 ティオ:そうなんです。 だから兄さん達が帰って来るまで、お屋敷を守るのがわたしの仕事なんです。 青果売の女:そうなの、頑張ってね。 ティオ:はい!  ・街民男がやって来てキョロキョロと辺りを見回す、ティオを見つけ声をかける。 街民男:ああ、居た居た。 ティオ:……? どうしたんですか? 街民男:領主様の屋敷に、人が来てるみたいなんだ。 見た感じ、警備騎士みたいだったけど……。 ティオ:ほ、本当ですか? 急いで戻らないと……!  ・ティオ、挨拶すると走って屋敷に戻る。  ・リンド邸外、騎士が辺りを見回している。ティオ、見つけるとパタパタと駆け寄る。 ティオ:あの、領主様に御用ですか? 騎士:貴方は? ティオ:カンパニュラ領主、リンド・ブルーゲル様の世話役です。     領主様は現在外出していますので、わたしが言伝を受けます。 騎士:そうですか、良かった。 誰もいなくて……ブルーゲル様にご伝言です。    現在、帝国領土内に大規模な寒波が押し寄せています。 ここも今夜か明日には、強い吹雪になると思われます。    場合によっては、家屋が損壊する恐れがあります。 至急街に警戒宣言の発令をお願いします。 ティオ:え、ええっ!?  ・リンド邸玄関ホール、買ってきた物を置いて、アワアワするティオ。 ティオ:ど、どどど、どうしよう……!? こういう時、何をすれば良いんだろう!?     えと、えっと……そうだ! 街の皆さんにこのことを伝えないと!  ・キッチンへ走るティオ、フォリーさんが残した台帳を開く。 ティオ:確か街に魔物が来た時、警報が鳴ってたはず。――あった!  ・台帳を持ったまま、執務室へ走るティオ。壁の仕掛け扉を開くと、中からマイクに似た装置が出てくる。  ・台帳を横に置き、起動させる手順を確認する。 ティオ:拡声用のコードを……こっちに、繋げて……よしっ。 次に起動――起動? ……『力』を込める?  ・装置を触ったり動かしたりしてみるが、まるで反応がない。 ティオ:ち、『力』を込めるって、どうすればいいんだろう……?  ・涙目。 ティオ:どうしよう、どうしよう……。 ここは、兄さんに聞いた方が良いかも……よし!  ・再び玄関ホールへ走るティオ。設置されている通信装置の前に立つ。 ティオ:いつも、確かこんな感じで使ってたような――えい! あれ?  ・見様見真似で装置を弄るが、こちらも反応がない。 ティオ:…………も、もしかして……これも『力』が使えないとダメなのかな?  ・半泣き。 ティオ:どうしよう、どうしよう、どうしよう……っ。 早く警戒宣言を出さないと――。  ・その場にへたり込んで、頭を抱え考えこむ。 ティオ:街の皆さんに伝えないと……伝える……。  ・何かに気づいたように、おもむろに顔を上げる。 ティオ:そうか、伝えられれば……!  ・すっくと立ち上がり、再び上着を着る。通信装置近くにあった住民票台帳を手に取ると、そのまま外へ走り出す。  ・街を駆けるティオ。先程に比べて、雪の勢いが強くなっている。  ・民家の扉の前で立ち止まると、扉をノック。 街民女:はいはーい……あら、ティオちゃんじゃない。 こんな雪の中どうしたの? ティオ:こんにちは、突然ごめんなさい。 これから雪がどんどん強くなって、今夜ひどい吹雪になるそうです。     なので、窓と戸をしっかり閉めて、吹雪に備えてください。 街民女:そ、そうなの? 確かに昨日に比べて雪が強くなってるけど……。 ティオ:警備騎士の方からの通達なので、間違いはないと思います。     それから、この事を他の街の方にもお伝えできますか? 屋敷の通信装置が上手く使えなくて……。 街民女:わかったわ。 ティオちゃん、あなたも早く屋敷に戻って――って、ちょっと!?  ・そのまま次の民家へと走るティオ。  ・何件もの家や施設を走って尋ねるティオ、その間も雪と風は強くなっている。 ティオ:――ですので、しっかりと戸締りをして、十分に警戒してください。 街民男:ああ、分かったよ。  ・男の後ろから、男の子が泣きながら出てくる。 街民子供:ティオねーちゃああん……。 ティオ:どうしたんですか?  ・しゃくり上げる子供、ティオはしゃがむと子供の頭を撫でる。 街民子供:ちゅ、中央広場に、ひつじだまがいるの……野良で、みんな飼えなかったんだけど……っ      こんな雪の日に、外にずっといたらぁ……あの子死んじゃうよ〜……! ティオ:ああっ、泣かないで……だ、大丈夫です! わたしがこの後様子を見に行きますから。 街民子供:……っ、ほんと? ティオ:はい! その子はどの辺りにいるんですか? 街民子供:す、スズランの花の所……。 ティオ:スズラン花壇のところですね? わかりました、必ず見つけます。 街民子供:ありがとう! ティオねーちゃん! 街民男:ありがとう、でも危ないから早く戻った方がいい。 ティオ:いえ、まだまだ――――ってうわっ!?  ・強風に煽られ、その場ですっ転ぶティオ。犬神家状態。 街民子供:ティオねーちゃん!? ティオ:だ、大丈夫です……お見苦しいところをお見せしました。 街民男:ほら、天気もどんどん悪くなってる……。 ティオ:まだ訪問していないところもありますが、残り僅かなので大丈夫です。  ・再びそのまま走りだすティオ。  ・ポー家の屋敷玄関先、台風が如き吹雪の中、ティオが扉をノックする。 ミーケル:――はい。  ・扉が開き、ミーケルが顔を出す。 ティオ:こんにちは! 突然ごめんなさい……。 ミーケル:アントースさん? 一体どうしたのですか、こんな時に。 ティオ:はい、今夜カンパニュラに強い吹雪が――。 ミーケル:大雪の警戒令については、既にこちらも把握しています。 街民の連絡網もあります。      警報が鳴らなかったので、これからこちらでも鳴らす予定でしたし、伝達はもう街全体に行き渡ったと考えて平気かと。 ティオ:ほ、本当ですか!?良かったぁ……なんだか、屋敷の装置が上手く使えなくて、それで……。  ・顔を綻ばせるティオ、鼻水が垂れる。 ミーケル:ですので、貴方も早く屋敷に戻ってください。 何かあれば、貴方を知る人が悲しみます。 ティオ:は、はい……。 ミーケルさん、ありがとうご――。  ・木に積もった雪が、バサバサと大きな音を立てて落ちる。続けて強い風が民家の戸に当たる、雪が当たり大きな音を立てる。 ミーケル:……いよいよ強くなって来ましたね。 ティオ:…………。 ミーケル:……?  ・顔を青くしてぶるぶる震えるティオ。ミーケルが顔を覗き込む。 ミーケル:……大丈夫ですか? ティオ:は、はいぃ……。 大きな音に、驚いてしまって……。 ミーケル:(この天候より、音の方が怖いのかしら……。) これから、もっと酷くなると思われます。 ティオ:え、ええぇ……。 ミーケル:後は私達に任せて、貴方は早く戻ってください。 いいですね? ティオ:はい……。 ミーケルさん達もお気をつけて――。 ミーケル:言われるまでもありません。 さあ。  ・ティオ、会釈するとまた駆けて行く。それを見送るミーケル。 ミーケル:……。  ・中央広場、花壇付近の茂みを掻き分けるティオ。 ティオ:どこでしょうか……うぅ……。  ・茂みの奥に、ぷるぷる震えている毛玉を見つける。 ティオ:いた! ひつじだま:メェ……。  ・着ていた上着を脱ぐを、ひつじだまに包むように着せ、そのまま抱える。 ティオ:よかった……もう大丈夫ですよ。 ちょっと我慢しててくださいね。  ・震えるひつじだまを抱えて走り出すティオ。吹く強風に煽られて、何度も転ぶ。  ・遠くから警報のアナウンスが鳴り始める。  ・帝都フロレス城大ホール、多くの要人や騎士が正装をして談話を楽しんでいる。 ファル:……居心地わっりぃ〜。 リンド:これも仕事の内だ、我慢しろ。  ・ホール端の椅子に座っているファルーフ。傍らにはリンド、スピラ、ブレスが居る。 ブレス:ティオ君とも一緒にパーティー楽しみたかったですねー……。 スピラ:あやつなりの気遣いなのだろう、汲んでやろうではないか。 それに、我々よりももーっと気落ちしてる奴もいるしな。 ファル:そーそー、あんまり言ってやんなよ。 ブレス:そうですね! ごめんなさい、リンド君。 リンド:きっさまら……!  ・思わず拳を震わせるリンド。 マグナ:ここにいたか、リンド!  ・マグナとラナンが登場。数名の表情が陰る、椅子から立ち上がるファルーフ。 マグナ:今年もお前の活躍、我が元にも届いているぞ。 リンド:……恐れ多いです、騎士長。 マグナ:その手腕は是非とも、この帝都にて奮って欲しいと常々思っていたところだ。 お前のその力なれば、我が後任も出来よう。     そして今宵は無礼講、立場など気にすることはない。 お前もそう肩肘を張らず、呼び捨てて構わんのだぞ。 リンド:いえ、私もまだまだ未熟者の身です、騎士長には遠く及びません。 それに呼び捨ては如何かと……。 マグナ:ふむ、そうか。 リンドは真面目だな! リンド:恐縮です。  ・マグナ、スピラとブレスに向き直る。 マグナ:ジプソフィ卿、騎士エントニエン、貴公等の仕事も見事であった。     また来年度も、変わらずその力を帝国の為に奮って欲しい。 期待している。 スピラ:はっ。 ブレス:お任せください。  ・一礼するスピラとブレス。  ・少し輪から外れて、ラナンがファルーフに話しかけている。ファルーフは視線を合わせない。 ラナン:――聞いたぞ。 カンパニュラ、魔物の襲撃があったんだってな。 ファル:情報遅すぎ、既に5回は超えてるぜ。 ラナン:そうだったか……しかし、警備騎士の増員を断ってるとも聞いたぞ。 一体どういうつもりだ? ファル:知るかよ。 現状デカい被害は出てねーんだ、問題ねーだろ。 ラナン:結果論で語るな。 何より、今被害が出ていなくとも、これから先出る可能性は否めないだろう。     民を、国を守る為に、事前に災厄を防ぐように警戒することは、騎士として正しい姿じゃないか? ファル:うるせーな……悪いけど、アンタのご高説聞いて心改められる程、オレは人間ができてねーんだよ。 ラナン:……その力を未だ手放さないのは、何か守りたいものがあるからじゃないのか? ファル:アンタの物差しで、オレを測るのはやめろ。  ・蔑むような視線を向けるファルーフ、二人の間にピリピリとした空気が流れる。 ブレス:こらぁ! せっかくのパーティーなんですから、お二人ともケンカはダメですよ。 めっ!  ・ニコニコしたブレスが、両手にグラスを持って二人の間に割って入る。それぞれのグラスを二人に押し付ける。 ファル:オメーなぁ……。 ラナン:おっと、これはジプソフィ卿。お見苦しいところを、失礼しました。 ブレス:ほらほら、もっと食べて飲んで、今年の思い出を話しましょう。 グラスはちゃんと、アルコールが入ってるのを持って来ましたから。 ファル:オメーは飲むなよな? ブレス:わかってますよー。  ・談笑中、ギャルソンがやってくる。 給仕:リンド・ブルーゲル様、ファルーフ・シルバ様、少々宜しいでしょうか? ファル:ん? リンド:何か?  ・夜、カンパニュラのリンド邸。ティオがひつじだまを抱えながら帰って来る。 ティオ:ふうぅ……ただいま、帰りました〜……。 ひつじだま:メェ〜……。ぷしゅん!  ・応接間へ移動。ソファにありったけのクッションを置くと、そこへひつじだまを乗せる。  ・急いで暖炉に薪をくべ、火打金を打ち合わせ火を熾す。 ひつじだま:メェ。  ・寒さによる震えが、次第に治まっていく。ティオがひつじだまを優しく撫でる。 ティオ:もう少ししたら、ごはんを用意しますね。  ・轟々と、雪と風が窓と壁を打ち付ける音。ビクリと反応し、再び顔を青くするティオ。 ティオ:そ……その前に、戸締りをしないと……。  ・屋敷中の戸と言う戸を厳重に閉めるティオ。時には木板を出して補強するが、器用でない為ずれたり壊れたりしている。 ティオ:――こんな感じで、大丈夫かな?  ・強風が戸に当たり、ガタガタと音を立てる。 ティオ:だ、大丈夫、かな……?  ・リンド邸キッチン、食材を取り出すティオ。 ティオ:……ひつじだまって、何を食べるんだろう? ……あ。  ・食材棚の中から、勝手にトウモロコシにかじり付くひつじだま。  ・キッチンのテーブルに並べられた夕食を食べるティオ。  ・隣の椅子に、トウモロコシやカブが入った皿が置かれ、それを食べるひつじだま。  ・再び風雪が強く戸叩く音、先程よりも更に強く大きくなっていく。 ティオ:――っ!?  ・ティオ、顔を青くする。気にせずトウモロコシをかじるひつじだま。 ティオ:わ、わたしがしっかりしなきゃ……。 ひつじだま:メェ!  ・険しい顔をするひつじまだ、そのまま脱糞。 ティオ:わー! ここでしちゃダメですよ!  ・夜、カンパニュラの街はどこも灯りが消えている。地面は雪が積もり、風雪が街中の家屋を打ち付ける。  ・台風ばりの轟音が窓の外で鳴り続ける。 ティオ:(兄さんに任された……このお屋敷を……守るんだ……!)  ・使用人室、ベッドの上で布団に包まり、枕を抱えて体育座りするティオ。 ティオ:(わ、わたしが……! でもぉ……。)  ・半泣き状態でガクガク震えている。 ティオ:(……こわいよぉ〜……!)  ・そんなティオなど気にせず、用意されたバスケットの中で眠るひつじだま。 ティオ:(き、きっと……朝になったら雪も止んで、嵐も治まる……それまで辛抱……!)  ・吹雪の音の中に、戸が乱暴に開けられる音がする。 ティオ:っ!? ひつじだま:メ!?  ・音にビクリと反応するティオ、起きるひつじだま。  ・執務室の方からの音、続けて数名の荒々しい足音と、話し声が聞こえてくる。 ティオ:な……なに……?  ・使用人室から出て、恐る恐る執務室の方へと物音立てずに近づくティオ。付いて行くひつじだま。 ティオ:(誰か、いる……? あっ……!)  ・灯りが消えてよく見えないが、人影が二つ。何か言い合いながら部屋を物色している様子。 ティオ:(こっこれって、泥棒……!? ど、どうしよう、どうしよう……!?)  ・再び足が震え、涙を流すティオ。 ティオ:(こわい……! こわいよ、でもぉ……わたしが、わたしが……!)  ・目をぎゅっと瞑る。脳裏に蘇る、父やリンド達のキャラ崩壊せんばかりの笑顔。そして見開く。 ティオ:(――わたしが、このお屋敷を守るんだ!!)  ・ティオ、勢い良く走り人影に突撃する。ひつじだまが後に続く。 ティオ:わーーーーーーッッ!! 人影A&B:ぎゃーーーーーーッッ!?!? ティオ:えいっ!!  ・ティオが拳を振りかぶり突き出す。器物が半壊する生々しい音。 ティオ:えい! えい!!  ・ティオが拳を振り回す。器物が全壊する騒々しい音。それに便乗して、ひつじだまが辺り構わずボディプレスをかます。 人影A:ちょっ! ま――ッ! 人影B:お、おち……落ち着け! ティオっ!! ティオ:えっ!?  ・ティオが攻撃を止めると同時に、部屋の明かりが灯る。 ティオ:――に、兄さん!? ファルーフさん!? ファル:っつつ……。  ・拳圧がかすったり、破損した器物片が当たったりしたのか、服が切れたり顔に傷ができているリンドとファルーフ。 ファル:あーあー……派手にやったな〜。 って、何だコイツ?  ・無理やり開けた戸や、壊れた器物が床に転がっている。  ・未だぴょんこぴょんこ跳ねてたひつじだまの毛を掴み、持ち上げるファルーフ。 ティオ:ご、ごめんなさい……! えぇっと、その子については話すと長く……って、お二人はどうして? リンド:こちらも話すと少し長い。 とりあえず、部屋を片付けるぞ。 二人とも手伝え!  ・回想開始。帝都フロレス城大ホール、ギャルソンに呼び止められる二人。 給仕:リンド・ブルーゲル様、ファルーフ・シルバ様、少々宜しいでしょうか? ファル:ん? リンド:何か? 給仕:カンパニュラから、指名で通信連絡が入っています。 ファル:おっ? スピラ:なんだと? ブレス:わー、ティオ君からですか? ティオ君とお話できるんですか? リンド:発信元は? 給仕:ポー家の、ミーケル・ポー様からです。 リンド&ファル:…………えっ?  ・通信室、装置正面にリンドが座り、椅子の後ろにファルーフが覗く姿勢で立っている。  ・装置映像面に、荒い映像でミーケルが映っている。 ミーケル:――お呼び立てして申し訳ありません。 リンド:いえ……一体どうしたのですか? ミーケル:先日提出していただきました決済書類及び予算書、無効です。 リンド:は……はぁ!? ミーケル:私達も、まさかブルーゲル様がこのような子供じみた悪戯をされるとは、思っていませんでした。  ・手に持っていた封筒から、書類を取り出すと映像面に近付ける。どの書類も白紙の状態。 リンド:そんな……確かに書類全てに署名捺印、三度も確認して封に詰めたはず……。 お前も見ていただろう!? ファル:だ、だったかなぁ〜……? リンド:おいぃ……! ミーケル:貴方様がどれだけ細心の注意を払っていたとしても、現状届いた書類はこの白紙……。      我々へのささやかな意趣返しといった所ですか? 随分と子供っぽいのですね、失望しました。  ・絶対零度の視線。 ファル:(言葉責めの一族か……恐ろしや。) リンド:いや、待っていただきたい。 これは何かの――。 ミーケル:まあ、貴方様の些細な復讐はさておいて。 一体どうなさるおつもりですか、領主様?      終わるはずだった仕事は何一つ終わっておらず、このままではこの一年の街民の奮闘は無に帰ったも同然。      ……貴方様を信頼していた街民にとって、これ以上の裏切りがありましょうか? リンド:ぐっ……。  ・眉間に皺を寄せたまま目を伏せるリンド、少し間を置き、顔を上げる。 リンド:……これより、カンパニュラに戻ります。 ポー卿には今しばらくお待ちいただきたく。 ファル:ちょ、マジかよ!? ミーケル:そうですか。 期待はしていませんが、その旨セオルス様にはお伝えしましょう。  ・装置の映像面から光が消える。  ・大ホールを早足で突っ切り、城門へと向かうリンド。後を追うファルーフ。 ファル:おいおい! 今から帰るって、どう考えても無理だろ!? リンド:それでも戻らねばならん! スピラ:ん?  ・ホールに居たスピラとブレスが、帰ろうとするリンド達に気付き駆け寄る。 ブレス:穏やかじゃないですね、どうしたんですか? リンド:二人とも、すまない。 これからカンパニュラに戻る。 ブレス:えー!? スピラ:先ほどの通信連絡か? ファル:まあ……そんなトコ。 スピラ:しかし、現在カンパニュラ付近は豪雪の警戒令が出ていて、とても戻れるような状況じゃないぞ。 リンド:行ける行けないの話ではない、行かねばならないのだ……!  ・若干ノイローゼのように凄むリンド。 ブレス:――じゃあ、馬と馬具を貸します。 それを使ってください。 ファル:いや、この天候じゃ馬も走れねーだろ。 ブレス:はい、だから馬具もお貸しします。  ・ジプソフィ邸、馬屋。二頭の馬に、ブレスがジェム加工されている馬具を取り付ける。 ブレス:温熱効果のあるジェムが付いています。 お馬さんもこれがあれば、寒い思いをしなくなりますよ。 ファル:こんなんもあるのか……。 これなら、騎手も寒くなかったり? ブレス:騎手にも効果はありますが、走る時の風は冷たいままですから、プラマイゼロってトコですね〜。 ファル:ええぇ〜……。  ・ファルーフ、がっくりと肩を落とす。話している間に上着を着込んで騎乗するリンド。 リンド:すまない、この礼はいずれ必ず。 ブレス:気にしないでください。 それじゃ、ティオ君によろしく。 スピラ:他の騎士達には、我々から話をしておこう。 二人とも、死なぬようにな。 ファル:シャレになんないんですけどー!  ・リンドが馬を走らせると、続けてファルーフが追走する。  ・夜の街道を走る二頭の馬。 ファル:さっみいいいいいい!! バカーー!! ばかやろーーーー!! リンド:ええい、うるさーい!!  ・雪は尚も吹き荒ぶ。 リンド:騒ぐくらいなら、付いて来なければ良かっただろう!? ファル:ちょ、ひどくね!? ハッキリ言ってオレ――。  ・丘陵のようになっている所から雪が雪崩落ちてくる。  ・ファルーフ、隙かさず炎の小ロッドを取り出すと、雪崩に向かって炎を火炎放射が如く発射する。 ファル:――オメーより役に立つぜ? リンド:……その点については反論はないが、鼻水の垂れたままでのドヤ顔はどうかと思うぞ? ファル:しょうがねーだろ!!  ・吠えながら鼻水をすするファルーフ、再び走り出す二頭。  ・回想終了、場面は戻ってリンド邸の執務室。破損した器物を片付けつつ、書類を探す一同。 ファル:――んで、なんとか到着するも街は厳戒態勢。 屋敷の扉は開かず、仕方なく泥棒の真似事して部屋に入り、     お前にボコられ、今に至る、と。 ティオ:ごっごめんなさい! よく確認もせず、お二人に怪我を……。 リンド:いや、家を守る者の姿勢としては十分だろう。 ……加減は考えて欲しいが。  ・集められた書類をぱらぱらと目を通すリンド。表情は険しいまま。 リンド:……駄目だ、見つからない。 ファル:入れ間違えたなら、記載済みの書類があるはずなんだよな? リンド:…………。 ティオ:わ……わたし、他の部屋の書類も持って来ます! リンド:待て。  ・執務室を飛び出そうとするティオを呼び止めるリンド。机に座り、筆と書類を取り出す。 リンド:――今から、作り直す。 ファル:なっ!? ティオ:ええ!?  ・静止するより早く、書類作成を始めるリンド。それを見たファルーフ、諦めたように溜息を一つ吐くと、机の引き出しを漁り始める。 ファル:承認印は? リンド:左三段目、鍵は一段目だ。  ・言われた通りに引き出しを開け、判子を取り出すと書類の山の半分を持ち、応接用の机に広げる。  ・一度髪を結い直すと、手際よく判子を押し始めるファルーフ。 リンド:ティオ、輸出入の資料ファイルは? ティオ:あ、えっと……蔵書室に。 持って来ます!  ・執務室から駆け出るティオ。  ・蔵書室。両腕にいっぱい本を抱えるティオ。 ティオ:これと……これと……確かこれも。  ・何度も本を落としそうになりながら、執務室に戻るティオ。 ティオ:た、ただいま戻りました〜。 ファル:おう、ここに置いとけ。 リンド:ティオ。 ティオ:はい。  ・視線を向けずに、資料を近くに置くこをと促すファルーフ。リンドに呼ばれ、駆け寄るティオ。 リンド:ここの数字、上から順に読みあげてくれ。 正確に。 ティオ:は、はい!  ・ダイジェストで、物凄い勢いで筆を進めるリンド、黙々と書類確認をするファルーフ、外に薪を取りに行くティオが映る。  ・気がつけば外の吹雪はすっかり止み、雲間から朝日が射し始めていた。  ・構わず暖炉の前で眠るひつじだま。 リンド:――よしっ! ファル:こっちも終わった!  ・ファルーフから書類を受け取り、一通り目を通した後封筒に詰める。 ティオ:お疲れ様です……! リンド:まだだ。 さあ、届けに行くぞ。 ファル:あちらさん、起きてるか〜……? リンド:起きている! ……と、信じている。 行くぞ!  ・目の下に隈ができ始めているリンド。上着を取り、勢いそのままに外へ出る。ティオとファルーフもそれに続く。  ・ポー家屋敷の玄関先、扉の前でミーケルが立っている。 ミーケル:お待ちしておりました。 ティオ:ミーケルさん!? もしかして、ずっと起きていらっしゃったんですか? ミーケル:いえ、普通に寝ました。 ティオ:そ、そうでしたか……。 リンド&ファル:……。  ・改めて、封筒を差し出すリンド。 リンド:ご迷惑おかけしたこと、お詫び申し上げます。 今度こそ――。 ミーケル:拝見致します。  ・その場で封筒から書類を出し、パラパラと内容を確認するミーケル。 ミーケル:――確かに、受け取りました。 皆様、ご苦労さまです。  ・胸を撫で下ろす三人。 ミーケル:今年は、このようなことが無いことを願います。 ファル:あ、もう今年か。 ミーケル:……アントースさん。 ティオ:はい?  ・ティオに向き直るミーケル。心なしか、少し微笑んでるような表情。 ミーケル:吹雪も嵐も、怖くないと思いますよ。 ティオ:……え? ミーケル:それでは、私はこれで。 失礼致します。  ・ミーケル、屋敷の中に戻ると、扉が閉まる。  ・商店街通り。三人並んで歩いている。街中、沢山雪が積もっており、雪が朝日を反射している。  ・ファルーフ、大きく欠伸。 ファル:っくあぁ〜……。 年始から何かもう色々疲れたわ……。 リンド:今年は……いや、二度とこのようなことが起きないよう、細心の注意を以って行動しよう。 ファル:オレはとにかく平穏を望むわ。 ――おまえは? ティオ:わたしですか? えーっと……『力』がちゃんと使えるように、頑張ろうと思います。 ファル:ん? リンド:何かあったか? ティオ:警報の拡声装置とか、通信装置が上手く使えなかったので……。  ・萎縮するように肩を落とすティオ。 ファル:あー、だから連絡無かったのか。 リンド:そうか……帰ったら使い方を教えよう。 ティオ:あ、ありがとうございます! ファル:ええー!? とりあえず寝ようぜ……。  ・通りかかった宿屋の二階から、宿屋の主人が顔を出す。 宿屋の主人:領主様ー! 戻られたんですねー! リンド:はい、今朝方戻りました。 今年もよろしくお願いします。 宿屋の主人:こちらこそ、よろしくお願いしますよー! おい、ファルーフ! この後雪かきあるから逃げんなよ!? ファル:ゲェ!? オレ一睡もしてねーんだけど! 宿屋の主人:知るか馬鹿野郎!! ツケ貯まってんだから、こういう時くらい労働で返せ!! ファル:勘弁してくれ……。  ・肩を落とすファルーフ。二人のやり取りを見て、苦笑するリンドとティオ。 リンド:……寝るのは雪かきが終わってからだな。 ティオ:わたしもお手伝いします。 リンド:お前も寝てないだろう? ティオ:いえ、なんだか目が冴えて、あまり眠くないんです。 ファル:羨ましい限りだぜ。 ティオ:(独りの時はとても怖くて眠れなかったけど、兄さん達が帰ってきたら、吹雪なんて気にならなくなってたな。      兄さん達と一緒なら、吹雪も怖くない……。)  ・リフレインするミーケルの言葉。ティオ、はっとして。 ティオ:あっ。 リンド&ファル:?  ・ポー家屋敷内。ミーケルが暖炉の前に立つ。 ミーケル:……お疲れ様でした。  ・手に持っていた書類封筒を、暖炉の中に放り込む。燃える封筒。 セオルス:ハァ〜〜……。 ミーケル:如何致しましたか? セオルス:相変わらず、注文のしようのない仕事をしやがる……と、思いまシテネ。  ・先日リンドから渡された書類を読み返すセオルス。 ミーケル:領主後任として、十分ではありませんか。 何かご不満が? セオルス:何でもありまセンヨ。  ・リンド邸、帰宅する三人。そのまま通信装置の前に立つ。 リンド:――通常は、ここで『力』を入れると、装置が起動する。 ティオ:はい、でも上手く使えなくて……。 ファル:まあそこは、少しずつやってくしか無いよな。 せっかくだから、どこかに通信入れてみるか? リンド:ふむ、そうだな……。  ・映像面にフォリーさんが映し出される。 フォリー:まあまあ! 皆さんお揃いで! ひつじだま:メェ!  ・ティオにタックルをかますひつじだま。そのまま抱えるティオ。 フォリー:あらあら、お客様でしょうか? ティオ:えっと、そんな感じです。  ・目配せする三人。 リンド&ファル&ティオ:今年も、どうぞよろしく! --了-- □おまけ  ・帝都フロレス城、大ホール。リンド達が既に発った後。 マグナ:リンドが既に帰った……だと!?  ・その場に崩れ落ちるように絶望するマグナ。orz ラナン:騎士長……。 マグナ:なんという事だ……今回も、共に年明けの瞬間を過ごすことが出来なかったなどと……っ!  ・床バン。 ブレス:マグナ様、そんなに落ち込まないでください。 マグナ:……ジプソフィ卿? ブレス:この場に二人居なくとも、貴方様とリンド君は同じ空の下に居るじゃありませんか。 マグナ:……。  ・マグナに微笑みかけるブレス。 マグナ:そうだな、ジプソフィ卿の言う通りだ! 私とリンドは、同じ地に生き同じ時を生きている! スピラ:(単純だ。) ラナン:(単純すぎて面倒くさい。) --今度こそ、了-- ****************************************************************************** お疲れ様でした。以下解説。 ◇台本形式について 自分が漫画を描く時、一番最初にやる作業がこういったセリフの書き出しです。 これやらないと、どれくらい吹き出し入れないといけないのか分からなくなるので、ネームができません。 ただ、これを書き出すのも結構な作業なので、ここで頓挫することもままあります。 ファイル容量は自分が作ったテキストファイルの中でも一番大きくなりました。 マルバ様死亡ネタの時ですら、10kbだったのに…! 恐らくちゃんとした小説形態に整形すれば、もう少しシェイプアップできるのではないかと。 技量がないのでしませんが。 ◇時系列について 明確にどれくらいの頃とは決めていませんが、恐らくティオがカンパニュラに来て 既に一度年始を迎えているか?という感じです。 前回の年末、ファル兄さんは所謂風俗店で過ごしていて、年明けとともにゴミ捨て場に投棄された。 という出来事があり、お察しくださいな会話になっています。 ◇フォリーさんについて フォリーさんは、カンパニュラでも帝都でもない街の生まれで、18歳位に帝都にやって来ました。 そこでブルーゲルの家に奉公に出るようになり、以降お手伝いを続けています。 但し住み込みではなくて、パートタイマーのような感じです。 帝都で今の旦那さんと出会い結婚。子沢山に恵まれ、子供たちは帝都やカンパニュラなど 各地で頑張ってるようです。 ◇ミーケルについて 名前:ミーケル・ポー。セオルスの秘書を務めているポー家の女の子で、セオルスの遠縁に当たります。 年齢はティオより一つ下。象徴花はトキワハゼ。 実は本編ですら言及されていませんが、セオルスの婚約者でもあります。歳の差婚。 やや相手を舐めたような態度を取っていますが、セオルスに対してはそれなりの愛情は持っています。 でも当のセオルスがリンド兄さんに(割りとシャレにならない感じで)ご執心の為、リンド兄さんのことが嫌い。 ティオなどの他の縁者に対しては、そこまで態度はひどくないです。 ◇帝国騎士について この時期で帝国騎士になっていないのは、空気さんだけです。 但しナディナ・エレク・ハイドラ(リューゴ)は、諸々の都合により、部屋に引きこもってます。 黒幕さんはあれで外交的で顔が広い為、登場こそしてませんがみんなとも話していたと思われます。 ◇ティオと嵐について その昔、パパが長期外出中に鈍行台風が住んでる家直撃コースで発生したことがあり、 台風対策をしていない家はボロボロ、その状態でパパが帰って来るまで放置状態。 という事があり、ティオは嵐、及び大きな音が苦手です。 ◇ひつじだまについて 未年に出せば良かったですね、この話。 ◇通信装置他について 所謂魔法アイテムです。まほうのちからってすげー! 近代的なSFテイストアイテムは、王国側の専売特許となっています。 こちら側のアイテムは、もう少しファンタジー要素が強いです。 例えば、通信装置なんかは立体水鏡、といった感じです。 …以上、微妙に時期外した感がありますが、ここまで読んで下さった方、もしくは最後だけ読んだ方、 長い茶番にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。今年もよろしくお願いします。