『炎の誓約』  その炎は、今も心の中で絶えることなく燃えている。  メラメラと、  ゴウゴウと、  少女の世界すべてを燃やし尽くす紅の炎。  村が燃えていく。  田畑も、家も、木々も広場も家畜も、人も。  見上げると夜空には月。  赤く燃え上がる世界を見下ろすように、月は淡く輝いている。  はたしてあの惨劇から生き延びられた人はどれだけいるのだろうか。夜半、突如として襲撃してきた聖堂騎士たちは、ただ淡々と少女の世界を破壊していった。女も子供も関係なく、無慈悲に殺されていく。彼らにとって異端は殲滅するべき絶対悪でありその剣筋に迷いはなかった。  少女が生きて村を脱出できたのは奇跡だったろう。頼もしい兄貴分が死にものぐるいで助けてくれた。そのおかげで、少女と、少女の友人の赤ちゃんは、こうして消えていく村を眺めていることができるのだ。  耳に遠く聞こえてくるのは、赤ちゃんの鳴き声。  兄貴はなんとか泣き止ませようと悪戦苦闘している。  そんな、数時間前には当たり前だった光景は、今となっては違和感まみれで、ひどく現実味を欠いていた。  頬を、一筋の涙が流れた。  ――――世界は終わりを告げたのだと、ようやっと、少女は自覚した。  それは理不尽だった。  少女と彼女を取り巻く世界に落ち度なんてない。少なくとも、このような仕打ちを受けるような非などありはしない。ならばコレは神様の下した裁きだとでも言うのか。わずかな幸せさえ許されないほど、私たちは邪悪だとでも言うのか。  違う、はずだ。  あの人は最期まで神を信じていた。救いはあると信じていた。だからきっと私たちは神に愛されているはずなのだ。あの人が信じたモノを、自分たちが信じなくてどうするというのか。  だから、きっと。  少女の眼前に広がる地獄は、ただの理不尽なのだ。  許せないとすれば、そう。  こんな地獄を強いてきた、理不尽そのものだ。  燃えていく世界。  それをしっかりと目に刻み、胸に留め、心にしまい込む。  怒りすら超越した先に少女はすでに立っていた。  聖堂騎士団が憎くないわけではない。だが、ただ言われるままに剣を振るうしか脳がない殺戮機械へ憎悪を向けても意味は薄い。自分が戦わなければいけないのはもっと大きなものだ。  ……まず、勝ち目のない戦いだと、考えるまでもなく理解できていた。  しかし、少女は立ち止まる気もなかった。  ほんの少しでも――  あまりにも強大すぎる理不尽と言う名の暴力から、誰かを支えられる力になれれば。  自分のように泣く運命の人を、助けられたならば。  だから少女は胸に刻む。  黒い夜空の下、赤く燃えて溶けて流れ消えていく現実を、決意とともに心にしまう。  怒りの炎を武器に変え、  理不尽を焼きつくす業火と成す。  少女の抱いた大きな決意。  世界とともに死んで、炎の中より再生された少女の人生。  自分に何ができるかはわからないけれど――それでも、この決意は絶対に揺るがない。  ――――そうして、また朝が来る。  さわやかな朝の日差しに目を細める。  窓をあけると、吹き込んできた風が青い髪をふわりとゆらしていく。  ここは風の都ウェントゥス。  自分のやるべきこと、やりたいことは見えているのに、具体的に何をどうすればたどり着けるのか分からずあがき続けた日々の果て、やっとたどり着いた彼女の戦場だ。  ただがむしゃらに戦い続けた日々。  剣をとり鎧をまとい、精霊術を駆使し戦場を駆け抜けた。  もちろん無為な日々などではなかった。だけど、もう少し早くこの場所に巡り合っていたならばと自嘲してしまう。結局、自分は何も見えていなかったのだろう。だから気づくのに二十年以上の年月が必要だったのだ。  そう、気づいてしまえば簡単なこと。  相手はあまりにも強大で、自分ひとりで支えきれる人なんてたかが知れているのだ。  だから剣を置いた。  彼女を支え、助けるために。  異界からやって来た小さな少女が、この世界の理不尽に焼きつくされないように―― 「さて、と」  メイド服に袖を通す。  不思議と、長年着込んでいた騎士鎧よりも身体に馴染んでいる気がする。  それがちょっとだけ、嬉しかった。 「今日もはりきっていきましょう――」  かつて少女だった女性は微笑みを浮かべる。  風に揺れて、ふわりとカーテンが舞った。  糸冬 『あとがき』  Q:ルゥリィ何歳だよ  A:ルゥリィさんじゅうにさい。ょぅι゛ょだお!  ※ 設定は変更される可能性もあります。増減どうなるかは知らんけど。  ……というわけで、久しぶりにSS。  製作一時間くらいの殴り書きそぉい\(^o^)/ <誤字脱字しらねー( ゚д゚)、ペッ  おたおめ絵が美しすぎてテンション上がりまくりで鮭が手につかなくなってきたので吐き出させてもらったで御座る。  こいつと風の聖女シルフィード(と後ひとり)は形を変えつつb.H.H現代編超初期妄想の頃から存在するから無駄に裏設定が残ってるという罠。そして裏設定が本筋になんら関係しないという大罠。つーかシルフィードはともかくルゥリィとかいなくても本編に特に影響ないからね!! なにそれひどい。  とりあえず見た目炎成分ゼロなのに炎属性なのはこいつの心根の問題という話。  b.H.Hの属性はわりと心のあり方や外部からの影響でさくっと変わる程度のものなので、何かに固執することで特定の属性を得るというのもよくある話。多分。  おたおめ絵ありがとうでしたあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!