・黒歴史学園パロ ・シーヴェル先生@美術教師とソーン先生@初等科教師しか出て来ません。 ・異空間から繋がるカオス世界。時間軸、本編記憶継承などは様々。 ・二人の設定軸は原作本編中盤?くらい。 Q.地の文どこいった A.心の目で保管お願いします…埋めてもいいのよ… 台詞書いたあとちょくちょくいじっていたにもかかわらず 1年半近く経過しても完成しなかったのでそぉい!! ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ■ 幸せの権利 黒歴史学園放課後。 生徒達が帰宅し、静かな美術室。 その片隅にある机に一人向かう人物。 銀色の長い髪をゆったりと流している青年。 美術教師シーヴェルは、生徒に与えていた課題のチェックをしていた。 この学園には様々な異世界から生徒や教師、関係者が集まっている。 それは普通に生きていたら、いや己の世界をある程度把握している神であるシーヴェルにも 本来は出会うことが出来なかったはずの人物。 「今日の課題は静物だったのに…どうしてこうなるのやら」 個性的、を絵に描いたような生徒たち。 課題には想定していた範囲から程遠い物も多い。 創作物というものは他の教科以上にその個性が反映されやすい。 そこになかったはずのモチーフが混ざったもの。 何を現してるのか判別が難しい抽象的なもの。 見ていると不安になる混沌としたもの。 生徒のものとは思えない芸術的なもの。 そんな中マイペースに無難に仕上がっているもの。 最初はあまりの混沌っぷりに戸惑ったが、今ではそれは楽しみの一つである。 しかしそんな彼の体を突然の痛みが襲った。 特定の部位ではなく肉体を、そして魂を蝕むような痛み。 「くっ…またか」 普通の人間なら耐えられるものではないかもしれない。 だがそれはシーヴェルにとっては日常の一部かのようによくあること。 本来は一つの完全な神として誕生するはずが 予定外の双子として生まれた風竜神レティス。 その際、魂が裂かれ不完全となってしまった。 魔力などの能力自体は元々の基準が高く設定されていたこともあり 普通に魔術師として戦う分には全く問題はない。 しかし『本体』である肉体と魂はそうもいかない。 ボロボロになった魂はその高い神としての器を 備えられるようには出来ていなかった。 「流石にここではまずいな」 一人でいることが多い自宅でなら倒れても問題ないが 万が一学園で倒れたりした場合、大事になってしまうかもしれない。 なにより学園寮にいる双子の弟レヴィアスに知らされるだろう。 体のことは幼い頃からここまで隠し通せてきたのだ。 それだけはどうしても避けたかった。 かといってまだ明日生徒に返却する課題のチェックは終わっていないので この状態で帰宅するわけにもいかない。 「寝不足ということにして、少し保健室を借りるか…」 シーヴェルは美術室を後にして保健室へと向かった。 学園の一階の端の一室。 どこか他の教室とは違うほんのり消毒の臭がする保健室。 「すみませんルナ先生。少しベットをお借りしたいのですが」 シーヴェルは中にいるであろう保健医のルナに声をかける。 しかし誰からも反応がない。 「あれ??」 少し奥に入り保健室を見回したが、そこにいるはずの保健医ルナの姿はどこにもなかった。 一応放課後とはいえ、まだ日は沈んでおらずクラブ活動などで残っている生徒も多い。 ある意味一番怪我をしやすい生徒もいるのに、少し無用心かもしれない。 「まあベッドを借りるだけだしいいか」 自分の体の具合は十分に把握している。 ルナ先生には悪いが、保健医が居たところで、 いやどんな名医がこの場に居たところで この苦しみを解決するのには無意味な存在だ。 むしろ人と顔を合わせることなく終わったのは好都合かもしれない。 自身にとっては今更な不調の理由を問い詰められるのは面倒だ。 少し薬品臭い白いベッドの上でシーヴェルは 静かにアメジストの瞳を閉じた。 ゆらゆら。 何か大きく温かい海のようなものに包まれたような感覚。 体が軽くなったような心地よさ。 誰かの気配だろうか? 「ん…」 シーヴェルが重たい瞼を開けると、 そこに一人の男が覗き込むようにして立っていた。 「気がついたみたいですね。シーヴェル先生。大丈夫ですか?」 「貴方は……」 寝起きでぼんやりとした頭をフル回転させる。 青銀色の長い髪、海のような深い青の瞳。 彼は初等科のソーン先生だ。 特別に親しいというわけではないが、同じ学園の教師として何度か話はしたことはある。 「迷惑をかけてしまってすみません…ソーン先生」 「いえ、迷惑など…保健室のベッドは先生にも開放されてますから」 「ところでどうしてここにソーン先生が?保健のルナ先生はどうしたのですか?」 「ちょっと出てくるから代わりにと保健室の留守番を任されまして。  もう放課後で初等部の生徒たちは帰宅した後だからいいですけどね。  まあその…ルナ先生にはよくあることですし」 ソーンはどこか歯切れの悪そうな表情で苦笑いを浮かべた。 そういえばソーン先生とルナ先生は付き合ってると 生徒の間で噂になっているのを聞いたことがある。 お人好しのソーン先生のことだ、自分を悪意なく頼ってくれる人を 断ることは出来なかったのだろう。 「ベッドで少しうなされてましたが、どこか具合が悪いのですか?  学園寮にいるレヴィアス寮長を呼んできましょうか?」 「あいつは呼ばないでくれ!余計な心配掛けたくない」 「そうですか…」 「これはただの寝不足ですから。  すみません…見苦しいとことを見せてしまって」 「本当ですか?」 「えっ」 少し強い口調のソーンにシーヴェルは息を飲んだ。 「以前から気になっていたのですが…」 「な、なんでしょう?」 「シーヴェル先生…あなた、魂が欠けてますね」 「何故…それを」 そんなソーンの言葉にシーヴェルは動揺が隠せなかった。 今まで誰にもそれはバレたことないことだったはずなのに。 「私には人の魂が見えます。生きてるものも…そして死者も。  あなたの魂は本来、人がしているべき形を成していない」 「ああ、そのことですか」 「私とレヴィアスは本来一人として生まれるものが  こうして双子として生を受けたもの…  だから恐らく魂も二人で分けあっているんだと思います。  欠けていてもおかしくはない。心配するようなことではありませんよ」 「分けあった…ですか…?」 「何か?」 「しかし彼の……い、いや何でもありません」 以前見かけたシーヴェルの双子の弟である学園寮の寮長レヴィアス、 彼も不思議な魂の形をしていた。 いびつな魂、だがそれはシーヴェルのものとは逆である。 シーヴェルの魂が『欠けている』とするのならば レヴィアスの魂は逆に『加えられた』と言ったほうが正しいのかもしれない。 どうしてそうなっていたのかはソーンにすら理解できなかったが、 『分け合った』と表現するにはあまりに不自然な配分だ。 「魂がそんな状態ではまともに生きるのも辛いでしょうに…  レヴィアス寮長はそれを知っているのですか?」 「……レヴィアスには黙っていてください。  ただでさえあいつは、私と力をわけあったことを引け目に感じている。  もしこの体のことを知られたら……」 「そうですか…」 「大丈夫、こう見えても私は普通の人よりは強い。  そう簡単に死ねるような存在ではありませんから」 「それに、『元気じゃない私』はあいつにとって必要ないですから…  できることなら…これ以上嫌われたくない」 そう小声で呟くとシーヴェルはどこか寂しそうな笑顔を向けた。 「シーヴェル先生、少し眼を閉じていただけますか」 「こう…ですか?」 ソーンは手に力を込め、そしてシーヴェルの額にそっと手をかざした。 温かく優しい『気』がシーヴェルを包み込んだ。 「ソーン先生…何を?」 「私の魔力を少し分け与えました。といっても貴方の苦しみからは  気休め程度にしかならないと思いますが」 「もしかして先程のも?  ……それは貴方の力を使うということでしょう?何故そこまでして」 「貴方が何を隠しているのかは正確にはわかりません。  ですが…大切な人との関係を自らの苦しみで維持できるのなら…  そちらを選びたい…私にはその気持ちわかる気がします」 「ソーン先生…」 シーヴェルのアメジストの瞳からは涙が一筋の零れていた。 「どこか痛みましたか?!」 「いえ…大丈夫です。おかしいな…」 「こうした優しさに慣れてなくて。ははっ可笑しいですよね。  そういったものは私には必要ないものなのに」 「必要がない…?」 「私はこう見えても『神』です。  私にとって幸福とは受けるものではなくて与えるもの。  このようなことに感動しているなんて…まだまだですね」 「……つまり貴方は『神』は幸せになる権利はないと?」 「……っ」 それは明らかにシーヴェルの失言だった。 冥界至高神ソーン・ネクロマンサー。 ソーンもまた自身とは異なる世界の神である。 「い、いえ、別にあなた方を否定したわけでは…」 「何が違うというのですか」 「私も…そして私の友人たちも神だ。  私は、彼らにも幸せになってもらいたい」 「私は貴方のことは、さほどよく知りません。  だから貴方から見ると見当違いのことを言っているかもしれません。  ですが貴方にその権利がないとは到底思えません」 「美術のシーヴェル先生はいつも明るく優しい先生だと聞いています。  でも苦しい時は誰かに吐き出してもいいのですよ。  まあ、私も人に言えたことではないですけどね…」 「そう…ですね。  すみませんがあと少しだけ…このまま休ませてください。  あ、体調の方は先程よりすっきりしたので一人でも大丈夫ですから」 「いいですよ。気にせずゆっくり休んでください」 眠かったわけではない。 眠りとソーンに分けてもらった魔力により体調も少し回復はしている。 だがシーヴェルはソーンの方から顔が見えないように背を向けると 深々と白いシーツを被り再び瞳を閉じた。 シーツ越しに浮かぶその細い肩はほんの少し震えていた。 数十分の沈黙の後、シーヴェルはベッドから起き上がった。 先程より顔色はよくなったようだ。 あまり休んでいても日が沈んでしまい間に合わなくなる。 保健室を見渡すと少し離れた椅子に腰掛けたソーンの姿が見えた。 「すみませんソーン先生…まだいらっしゃったんですか」 「特に用事があったわけではありませんし気になさらず。  おはようございます。気分は大丈夫ですか?」 「ええ。お陰様で。今日はどうもありがとうございました」 シーヴェルは軽く会釈をするとソーンの瞳をじっとみつめた。 「あの…また、保健室に遊びに来てもいいでしょうか?  あ、別に魔力が欲しいとかそういうのではないですよ!  ソーン先生といたら少し気分が安らいだ気がします  今までこうやって同世代の友人と話したことがなくて…」 「ええ、もちろん歓迎ですよ。この私で良ければまた話でもしましょう」 「今度来るときは、今日のお礼に美味しい菓子詰めでも持ってきますよ。  えーと…食べる方は大丈夫ですか?  ダメなようでしたら違うものを考えますが…」 「大丈夫ですよ。  生きる為の行為としては不要ですが、美味しい物は大好きです」 「よかった…人間やエルフなどの生態系はどこの世界も  うちの世界とそう変わらないのである程度は理解してるつもりですが、  まだ他の大陸から来た種族や神族は研究不十分なとこがありますから。  だからこそ、この学園は面白いんだけどね」 「ですね。私もこの学園で色々なことに気が付かされました」 「ソーン先生、今度は貴方の悩みも聞かせてくださいね。  私でよければいくらでも聞き役にはなりますから」 「ははは…考えておきます」 「今日は本当にありがとうございます」 笑顔で会釈をするシーヴェルの笑顔は今まで見た中で一番明るいものだった。 そんな笑顔につられてソーンも思わず笑みをこぼした。 「私の悩み…か」 ひとりきりになった静かな保健室、ソーンは誰に言うでもなくそう呟いた。 「誰にでも幸せになる権利がある、か…」 それは先程自分がシーヴェルに投げかけた言葉。 それはもちろん紛れもなく本心から出た言葉だ。 しかし、心にどこか棘の刺さったような感覚を捨てきれずにいた。 たしかにレイとセレの事は祝福しているつもりだし、 仲のいい友人である彼らには幸せになってもらいたい。 ルナだって自分に良くしてくれている。彼女を裏切りたいわけではない。 だが、心の奥底でそれと矛盾している自分の想い。許されざる願い。 自分さえ抑えれば、周りは幸せになるのだ。 「私も、シーヴェル先生のことは言えないかもな」 全てを割り切れるようになるのはいつの日か。 窓から差し込み赤い夕日を見上げソーンは静かに自嘲した。 しかし、ソーンはふとあることに気がついた。 「しまった…そういえば保健室は私の担当ではなかった…」 保健室が馴染んでしまっていたが、本来ここは自分ではなくルナの担当だ。 シーヴェルが次に遊びに来たところで、そこに自分の姿はないだろう。 大体シーヴェル先生も、自分が保健室の住人ではないことは 知っていただろうに、彼もどこか抜けているのかもしれない。 ソーンの顔から自然な笑みがこぼれた。 「今度シーヴェル先生には謝っておくか…」 翌日の放課後。 シーヴェル先生が再び菓子折りを持って保健室に訪れた時、 そこにいたのは保健医ルナではなく、やはり留守番を断りきれず 苦笑いをしているお人好しなソーン先生ただ一人であった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― Q.こんなキャラだっけ? A.ちょっとジャンピング土下座してくる/(^o^)\ Q.なんで二人共、敬語? A.親御さんに教師相手だとソーンさんは敬語と聞いたので。  多分シーヴェルもあわせてくる気がする。  でもそのうちきっと打ち解けて口調砕けるよ! ちょっとソーン先生誘拐してくるノィ